骨盤骨折
症状
すわれない、自力で体を動かせない等の激痛を伴う症状がみられます。
また、大量出血を伴う場合、ショック状態になる事もあります。
原因と病態
骨盤骨折は、交通事故、墜落外傷等の大きな外力が加わった時におこります。
特殊な場合として、若年者のスポーツ外傷として筋肉の付着部がはがれる剥離骨折や、高齢者の外傷として転倒等比較的軽微な外力によりおこる骨盤骨折もあります。
診断
大きく分けて、寛骨臼(かんこつきゅう)骨折と骨盤輪(こつばんりん)骨折の2種類の骨盤骨折があります。股関節は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭の2つの関節面が接してできています。つまり寛骨臼骨折とは股関節の関節内骨折です。
骨盤輪骨折は寛骨臼骨折を除いた骨盤骨折です。
いずれも、X線(レントゲン)で診断しますが、骨盤の形状は非常に複雑なため、CTにより骨折の位置を詳しく調べる事が、治療方針の決定に必要です。
また、血管損傷や膀胱損傷などの合併損傷を調べるためには、造影CTが有用です。
寛骨臼骨折 | 骨盤輪骨折 |
予防と治療
大量出血を伴う場合は、緊急で止血処置を行う必要があります。
骨盤周囲を一定の圧力で圧迫する器具や、創外固定と呼ばれる骨折部を体外で仮固定する器具を用いて、骨折部を安定化させることが止血の基本になります。さらに、血管造影を行い損傷動脈を見つけ出し、ゼリー状の物質や金属製のコイルを動脈内に挿入し人工的に閉塞させる処置(塞栓術)を行います。
止血処置が効果的に行われれば、ショック状態から離脱する事ができるため、骨折の治療を計画します。下肢を牽引する事で、骨折部のずれを減らすことができる場合は、大腿骨遠位または脛骨近位にワイヤーを刺入し、手術までの間持続的に牽引します。
寛骨臼骨折は関節内骨折であるため、なるべく正しい整復位置に戻す事が重要です。もし骨折のずれや段違いを残したまま保存的に治療した場合、骨折は癒合しても変形性関節症が経時的に進行するため、将来人工関節置換術を要する可能性が高くなります。
しかし寛骨臼骨折の手術は非常に難しく、大量出血等の危険を伴うため、手術を行うかどうかは慎重に考えてから決めるのがよいと思います。
骨盤輪骨折は骨盤後方要素が破壊され、骨折の不安定性が強い場合、手術の適応となります。スクリュー、プレート、脊椎固定用のインプラント等を使用し内固定を行います。
保存的に治療する場合に比べ、早期に車椅子や歩行練習が可能になる事が利点です。
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