嬉しい知らせ
先日、イギリスにに留学していた時の同僚からメールが届きました。"Finally, our paper has been accepted!!"
https://pubs.rsna.org/doi/abs/10.1148/radiol.212779
ゴーシェ病(Gaucher disease)という非常に稀な先天性代謝異常症の患者さんでは、脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折などの病的骨折が多いことが知られていました。しかしながら骨密度検査では、変形をきたしていることが原因で、骨密度は高値となり骨粗鬆ではないと診断され、結果、何も治療、指導されてないのが問題でした。しかしながら、骨密度は低値とならずとも、レントゲン上は、整形外科医にとってみれば、明らかに骨粗鬆症で、骨折の危険性が高いと判断できていた症例も多々あることがわかりました。1st authorのSimonaは内分泌代謝を専門とする医師で、ゴーシェ病の患者さんの股関節レントゲンを全て見直し、骨折の危険性については、Cortical thickness index (CTI)という大腿骨の形状を解析するプロジェクトを立ち上げ、私もそこへメンバーとして加わり、結果、骨折の予測には骨密度検査よりも有用であることを提唱した論文となります。
Simonaは、タバコ、エスプレッソコーヒーと音楽をこよなく愛するイタリア人でした。渡英直後は、イタリア人のなまり英語は"h"を発音としないこと("angry"と"hungry"は同じ、"house"は"アウス"と発音)、"r"で思いっきり舌を巻いて発音することなどがさっぱりわからず、「彼女は本当に英語を喋ってるのか?」と思わされるほど苦労しました。が、彼女は本当に日本人に劣らぬほどのハードワーカーで、おかげで、帰国間際では彼女の英語が自分にとって一番わかりやすくなりました(彼女にとっても、私の日本語訛りの英語を理解してくれたようです。英語への苦手意識は、イタリア人も一緒でした。)。論文を書きあげても査読者からの厳しいコメント等で、この論文を仕上げるのに5年ほどの歳月を要しました。その間、他のプロジェクトと並行しつつも、継続して取り組んできた彼女を尊敬していますし、「継続は力なり」であることを、改めて教えてくれました。
実際の日々の診療において、骨粗鬆症の診断については、整形外科医がレントゲンを見れば、骨密度検査はせずとも骨粗鬆症が疑わしいかどうかは判断できます。しかし、骨密度検査をすることで、骨粗鬆症の程度を判断でき、その値の変化の推移をみていくことで、今の薬物治療、運動習慣が有効なのかどうか、判定していくことが可能となります。
当院では、半年から1年ごとの間隔で骨密度検査を行なっております。65歳以上の女性で、最近、身長が縮んできた方などで、ご心配な方は、スタッフや医師にお申し付けください。