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院長ブログ

宇宙飛行士から考える骨粗鬆症(2022.05.04更新)

皆さま、GWはいかがお過ごしでしょうか?

 3年ぶりに県境をまたぐ移動自粛を求めないGWとなりました。コロナ感染者数が伸びないことを願うばかりです。

 さて、旅行といえば、昨年度は前澤友作氏が、日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在しました。宇宙旅行時代の幕開けとも称され、宇宙に到達した民間人の数が、職業宇宙飛行士の数を上回る年だったそうです。

 イギリス陸軍航空隊をへて宇宙飛行士となり、2015年に約6ヶ月にわたり、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在クルーとしてミッションを遂行したTim Peake氏が、2017年に出版した“Ask an Astronaut: My guide to Life in Space”で宇宙の暮らしQ &Aに、宇宙での無重力が骨組織へ及ぼす興味深い内容を見つけましたので、私見を交えて紹介させていただきます。

 宇宙飛行士は宇宙空間で運動を欠かさず、ビタミンDをはじめとした栄養の摂取に気をつけるようですが、それでも無重力による骨組織への荷重負荷(メカニカルストレス)が減少するために、1月に1.5%ずつ骨量が減少してしまうそうです。これは、高齢者が1年間に失う骨量減少スピードに匹敵し、単純に計算すると宇宙飛行士はひと月に高齢者のおよそ10倍以上の速さで骨粗鬆症が進むことになります。地球の重力に解放されて、荷重負荷に耐える必要のなくなった骨組織は、体内にどんどん吸収されてしまうがために、血中のカルシウム濃度が高まり、尿管結石や、軟部組織の石灰化を引き起こしやすくなるのだそうです。
 骨強度が低下するため、地上に帰ってきた際には骨折しやすくなっているので注意が必要となります。Peake氏は、骨量が地上へ帰還後に6ヶ月で損失量の50%が回復し、完全に回復するまでに1,2年を要したとのことです。
 また、背骨を支える筋力も退縮してしまうため、宇宙飛行士の半数以上は首〜腰にかけての痛みにも悩まされるそうです。そして驚くことに、地上へ帰還したあとには、重力が筋力の弱った首〜腰にのしかかるために、1年以内での脊椎椎間板ヘルニアの発症率は、同年代の健常者に比して約4倍となるのだそうです。

 「骨や筋肉は体への荷重負荷(メカニカルストレス)に反応して、強度が維持される組織である。」ということを、今までの宇宙飛行士の体験をもって示された結果であると思わされました。
 結果では、「無重力空間に滞在したから骨と筋肉が萎縮した」ということになりますが、「無重力空間に滞在し、その環境に適応しようとして、頑健な骨と筋肉がもはや不要となり萎縮した」と考えられるのであれば、人間の体はなんと、環境に適応する能力が高い生物であるのか。とも、感心させられてしまいます。
 
 この話から考えると、「骨粗鬆症」の原因は、ただ単純に「年をとり、骨が弱くなった」のではなくて、「年をとって、足、腰に負担のかかる生活や仕事をしなくなり、結果、骨への刺激が少なくなったために、その環境に適応して骨が弱くなった」と考えるのが自然かもしれません。そうだとすると、「骨粗鬆症」治療で一番大切なのは「運動」にて荷重負荷(メカニカルストレス)を加えること。ということになり、改めてその重要性を思い知らされた次第です。

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