TREATMENT
インフルエンザやコロナウィルス感染が周囲で広がっている状況では、医療機関を受診することの不安もあると思いますが、抗リウマチ薬による副作用の出現について確認をしないことの危険性や、関節炎が残存することで関節破壊が進行してしまう可能性を放置しておくことの不利益の方が大きいと思われますので、予定通り通院され、採血等を定期的に行っていくことが大切です。もし万が一、ご自身に感冒症状、だるさ、空咳、微熱が続く等の症状がございましたら、メトトレキサートや各種注射による生物学的製剤、ゼルヤンツ、オルミエントなどのJAK阻害薬の内服は1週程度、一旦お休みしていただく方が安全と考えます。ただし、経口ステロイド剤であるプレドニンを中断することは、関節症状の再燃や、場合により離脱症状をきたしてしまう可能性があるため、プレドニンは必ず自己判断で中止なさらないようにご注意をお願いいたします。
手の変形
足の変形
関節内に存在する滑膜という組織が異常増殖することによって関節内に慢性の炎症を生じる疾患で、進行すると関節が破壊され様々な程度の機能障害を引き起こします。関節症状に加えて貧血や微熱、全身倦怠感などの全身症状を合併することもあります。最初は両方の手や足の指の関節が対称的に腫れて、とくに朝、こわばるようになります。また、人によっては膝関節や股関節など大きな関節にも病変が進み、水が溜まり、動きにくくなり、痛みのために日常生活に困難をおぼえるようになります。
どの年代でもおこりますが、特に30~40歳代の女性に多く発症します。軽症の人もいれば重症の人もいて症状も多彩です。早期の診断・治療が必要です。関節リウマチは、関節だけの病気ではなく全身病ですので、貧血症状がでたり、体がだるくなったり、微熱がでることもあり、こうなると症状が悪化します。全身の関節に進行していく病型の患者さんの場合、指や手首の関節が破壊され、指が短くなったり、関節が脱臼して強く変形することがあります。足のゆびにも変形がおこります。近年、高齢化に伴い、比較的高齢者となってからでも関節リウマチを発症することが徐々に注目されてきています。高齢発症関節リウマチでは、リウマチ性多発筋痛症と同様に、比較的急激に、しかも炎症が強く発症することが多いために、早期診断・治療の介入を行い、日常生活レベルを低下させないようにすることが大切となってきます。
遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因はまだよくわかっていません。関節リウマチの病態は、自己免疫疾患と考えられています。自分の身体の一部を自分のものではないとして、これに対する抗体をつくって反応をおこしてしまい、このために関節液をつくる滑膜という組織にリンパ系細胞が集まって反応がおこります。そして、滑膜はさまざまな破壊物質の産生工場となって、しだいに自分の軟骨や骨を破壊してゆきます。
重症の場合には、関節は固まったり、逆にゆるんで大きく変形したりします。そして最終的に関節が破壊されつくすと、変形を残して炎症はおさまります。
関節の腫れや炎症があり、その炎症がほかの病気で説明がつかないときに以下のスコアを用いて関節リウマチと診断します。この診断基準では、腫れていたり、押すと痛い関節の数や血液検査、急性炎症反応、滑膜炎の期間を調べます。この基準はリウマチを専門とする医師が使うためのものですので、医療機関を受診することが重要です。
A. 腫れていたり、押すと痛い関節の数 | ||
大きな関節※1 | 1ヵ所以下 | 0点 |
大きな関節※1 | 2~10ヵ所 | 1点 |
小さな関節※2 | 1~3ヵ所 | 2点 |
小さな関節※2 | 4~10ヵ所 | 3点 |
1ヵ所以上の小さな関節を含む関節※3 | 11ヵ所以上 | 5点 |
B. 血液検査 | ||
リウマトイド因子、抗CCP抗体がいずれも陰性 | 0点 | |
どちらかが陽性で、基準値の3倍以下 | 2点 | |
どちらかが陽性で、基準値の3倍より大きい | 3点 | |
C. 急性炎症反応 | ||
CRPと赤沈がともに正常 | 0点 | |
CRPまたは赤沈が異常値 | 1点 | |
D. 滑膜炎の期間 | ||
6週未満 | 0点 | |
6週以上 | 1点 |
尚、リウマチの血液検査(血清リウマトイド因子)が陽性というのは診断基準の一つを満たすのみであり、この結果だけで関節リウマチと診断することはできません。
関節リウマチが気になる方は、以下のQRコードから自己チェックも可能です。
原因が不明なため有効な予防法はありませんが、症状を悪化させないためには適切な休養と栄養が重要であることは明らかになっています。治療関節リウマチでは早期の治療が大切です。当院では、リウマチ専門医として下記の治療ガイドラインに基本的に準じて治療を行っています。
薬物療法にても、関節破壊をきたし、日常生活に支障を来たしている場合には手術の適応となってきます。