動く喜び 動ける幸せ
開院して2週間経ちました。ようやくクリニックの方も、スタッフ含めて新しいシステムに徐々に慣れてきたようです。そして皆様の協力のおかげで、午前の開院時と受付終了時以外はあまり、患者様をお待たせしなくても良い状況となってまいりました。これまでご不便をおかけしてしまいました患者様には改めましてお詫び申し上げます。
この間、患者様の来院時間の推移も併せて見せていただいておりましたが、やはり午後の方が、比較的空いております。「待ち時間は長いと困る」という患者様は午後のご来院としていただいた方がご負担をおかけしないと思いますので、ご案内させていただきます。
さて、今年もコロナ禍の影響の他に、ゴールデンウィーク中は天候に恵まれた日があまりなかったことから、外出できず自宅で過ごされた方も多かったのではないでしょうか?
私もゴールデンウィーク中の空いた時間には家の庭仕事を少ししながら、久しぶりに昔読んだ本を読み返していました。中でもホヤの興味深い生涯の話(注1)についてです。簡単にご紹介させていただきます。
「海のパイナップル」と称されるホヤは、実は、卵からオタマジャクシのような生き物として誕生するのだそうです。海水の温度、潮の流れ、岩場の状態など様々な状態を判断して終のすみかとなるいい岩を見つけるために海の中を動き回るために、脳と脊髄を持ち動く生き物なのです。そしてホヤは自分の居場所をみつけると、次第に動くことをやめてしまいます。動かなくなると運動をコントロールし、情報を処理する脳や脊髄はもはや必要がなくなるために、退化し、結果、驚くことに、自分の栄養として食べてしまうというのです。
そう言われてみると、動かないもの、例えば、木々や花などの自分で動くことのない植物には脳や脊髄なんていりませんから、結果としてこれらの臓器がないのでしょうか?
「生き物」の起源が動物も、植物も一緒であるのであれば、ホヤのように「動かなくなる」ことと「脳が退化する」ことは、何かしらの関連があるのかもしれないのかも。なんて思わされてしまいました。
近年、健康寿命(注2)を延伸とさせるためには「運動器」(注3)の健康を維持することが重要であることがわかってきました。それは、「動く」ことで筋力や平衡感覚を維持して転倒して骨折を起こし、寝たきりになってしまうことを予防するためといわれています。
しかしながら、最近、「動かなくなる」ことと、「認知症」の罹患率・程度は相関しうるとした報告がなされ、徐々に「ヒト」においても「運動器の退化」と「脳の退化」との相関が明らかにされつつあり、今後さらなる研究が期待されているところなのです。
整形外科医は、運動器の病気やケガを治療し、健康を守る専門家です。
「年なんかとったって動き回れっちゃ!」そんな元気なお年寄りの方々が、一人でも増えていただけるようお手伝いできたら幸いです。
(注1) おしゃべりな腸 ジュリア・エンダース、ジル・エンダース著、サンマーク出版
(注2) 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
(注3) 骨・関節・筋肉・神経などの体を支えたり動かしたりする組織・器官の総称